こんにちは、とし(@tyobory)です。
マクロ経済学第12回テーマ「インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ」です。
目次:「インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ」
2.デフレ・ギャップ
マクロ経済学では、完全雇用(失業者ゼロ)の達成が一つの政策目標として掲げられています。
この完全雇用が達成されたときの国民所得(GDP)の水準を「完全雇用国民所得(GDP)」といいます。
しかし、現実世界では、完全雇用が達成されておらず、現在の国民所得の水準と完全雇用国民所得の水準に差(GDPギャップ)が生じています。
他方で、総需要と総供給との間にも差(ギャップ)が発生しており、このことを「インフレ・ギャップ」または「デフレ・ギャップ」といいます。
本記事では、財市場の均衡(45度線分析)から、「インフレ・ギャップ」、「デフレ・ギャップ」について確認していきます。
インフレ・ギャップとデフレギャップ【完全雇用国民所得】
完全雇用国民所得水準が鍵。
インフレ・ギャップとは【総需要の超過】
まず、完全雇用が達成されたときの国民所得(完全雇用国民所得)とインフレ・ギャップについて図で表すと、次のようになります。
インフレ・ギャップとは、完全雇用国民所得水準における超過需要(総需要が総供給を上回った状態)のことを指す
インフレ・ギャップは、国民所得($\small Y^*$)が完全雇用国民所得($\small Y_F$)よりも大きいとき($\small Y^*>\small Y_F$)に、発生します。
このとき、総需要が総供給を超過してますが、すでに完全雇用が達成された状態であるため、新たに労働者を雇用して、財の供給量を増やすことができません。
したがって、図のような超過需要のことを「インフレ・ギャップ」といいます。
デフレ・ギャップとは【総供給の超過】
次に、デフレ・ギャップを図で表すと、次のようになります。
デフレ・ギャップとは、完全雇用国民所得水準における超過供給(総供給が総需要を上回った状態)のことを指す
デフレ・ギャップは、国民所得($\small Y^*$)が完全雇用国民所得($\small Y_F$)よりも小さいとき($\small Y_F\small >Y^*$)に、発生します。
このとき、財市場では総需要よりも総供給の方が大きく、モノ余りが発生しています。
したがって、図のような超過供給のことを「デフレ・ギャップ」といいます。
このような「インフレ・ギャップ」と「デフレ・ギャップ」は、経済上好ましくないため、政府の財政政策(総需要管理政策)によって解消することを目指します。
インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ【総需要管理政策】
総需要を管理する
インフレ・ギャップと緊縮的な財政政策
インフレ・ギャップの発生は、過度なインフレーションをもたらす恐れがあります。
そこで、政府は総需要を減らす政策、すなわち緊縮的な財政政策を行います(下図)。
総需要($\small Y_d=C+I+G$)のうち、政府は政府支出(G)を削減することにより、総需要を減らすことができます(政府支出⇒公共事業とか)。
つまり、総需要曲線は下方にシフトし、新しい均衡点は$\small E_F$となります。
その結果、インフレ・ギャップは解消され、完全雇用国民所得($\small Y_F$)が達成されます。
デフレ・ギャップと拡張的な財政政策
デフレ・ギャップが発生しているとき、労働市場では非自発的失業が発生していると言われます。
つまり、
非自発的失業の発生(働きたくても働けない)
⇒ 国民所得の減少
⇒ 購買力の低下
⇒ 超過供給の発生(モノ余り)
⇒ デフレ・ギャップ
そこで、政府は総需要を増やす政策、つまり拡張的な財政政策を行います(下図)。
拡張的な財政政策は、政府支出(G)を増加させ、総需要を増やすことができます。
(⇒失業率の改善に伴う、消費の増大)
つまり、総需要曲線は上方にシフトし、新しい均衡点は$\small E_F$となります。
その結果、デフレ・ギャップは解消され、完全雇用国民所得($\small Y_F$)が達成されます。
以上が、インフレ・ギャップとデフレ・ギャップを解消する財政政策となります。
補論:ISモデルにおける超過需要と超過供給
最後に、ISモデルにおける超過需要と超過供給について確認して終わります。
総需要と総供給のモデル式は、次のように示すことができます。
総需要:$\small Y_d=C+I+G$
総供給:$\small Y_s=C+S+T$
ここで、海外貿易のない閉鎖経済を想定します。総需要=総供給から、
$\small Y_d=Y_s$
$\small C+I+G=C+S+T$
政府支出(G)が租税(T)で賄われるとすると、残る項はI=Sとなります。
投資(I)を一定とすると、ISモデルは次のように示されます。
投資:Iが総需要側、貯蓄:Sが総供給側となります。
まず、投資が貯蓄よりも大きい(I>S)とき、$\small Y_1$では超過需要が発生しています。供給側である企業は生産量を増加させるため、国民所得を増加させます。
一方、貯蓄が投資よりも大きい(S>I)とき、$\small Y_2$では超過供給が発生しています。市場ではモノ余りが発生しており、企業は生産量を減少させ、最終的に国民所得は減少します。
以上よりに、投資と貯蓄が等しくなる$\small Y^*$で、国民所得は決定されます。
おわりに:総需要を管理する(ケインズ派の考え)
総需要管理政策はケインズ派の考え方であり、財政政策を通じてインフレ・ギャップとデフレ・ギャップが解消されると主張しています。
一方、古典派はそもそも完全雇用は達成しており、非自発的失業もいなければ、財市場の均衡は価格調整により達成されると、ケインズ派(有効需要の原理)とは対立した主張をしています。
まずは、インフレ・ギャップやデフレ・ギャップはケインズ派の理論であることを覚えておきましょう。
以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!
【参考文献】
中谷巌(2021)『入門マクロ経済学〔第6版〕』日本評論社.
齋藤誠他(2016)『マクロ経済学 新版』有斐閣.
大竹文雄(2007)『スタディガイド 入門マクロ経済学(第5版)』日本評論社.
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