こんにちは、とし(@tyobory)です。
マクロ経済学第10回のテーマは「IS-LMモデル分析」です。以下、全体の目次です。
目次:「IS-LMモデル分析①」
2.拡張的な財政政策(クラウディング・アウト)
3.拡張的な金融政策
これまで、財市場を均衡させるIS曲線、貨幣市場を均衡させるLM曲線。これまで2つの曲線を確認しましたが、今回は財市場と貨幣市場の同時均衡を学習します。
まだ、確認してない方は下記の記事をご参照ください。


以下、財市場と貨幣市場の同時均衡(IS-LMモデル分析)およびクラウンディングについて掘り下げていきます。
【マクロ経済学】IS-LMモデル分析【クラウディング・アウトを理解】
財市場と貨幣市場の同時均衡
IS-LMモデル分析【財市場と貨幣市場の同時均衡】
財市場と貨幣市場が同時均衡した場合の国民所得と利子率について考えます(下図)。
IS曲線とLM曲線の交点$\small E$では、財市場と貨幣市場が同時均衡している状態です。
このときの利子率:$\small r^*$を均衡利子率、国民所得:$\small Y^*$を均衡国民所得という。
今、$\small Ⅰ$から $\small Ⅳ$ の状態の場合、財市場と貨幣市場では超過需要もしくは超過供給が発生している。
$\small Ⅰ$:財市場は超過供給、貨幣市場は超過供給
$\small Ⅱ$:財市場は超過供給、貨幣市場は超過需要
$\small Ⅲ$:財市場は超過需要、貨幣市場は超過需要
$\small Ⅳ$:財市場は超過需要、貨幣市場は超過供給
結論だけ覚えると、IS曲線とLM曲線の上側の場合、超過供給が発生し、IS曲線とLM曲線の下側の場合、超過需要が発生すると理解すればOK。
貨幣市場は利子率の上下により調整される。一方、財市場は国民所得の増減によって総需要と総供給が調整され、最終的に均衡点は $\small E$ になる。
IS-LMモデル分析①:拡張的な財政政策
拡張的な財政政策が発動された場合、国民所得と利子率がどのように変化するのかIS-LMモデルで考えます。
政府支出の増加など、拡張的な財政政策が発動されると、乗数効果により国民所得は$\small Y_1$から$\small Y’$に増加し、均衡点は$\small E_1$から$\small E’$に移動する(IS曲線は$\small IS_2$にシフト)。
このとき、貨幣市場では超過需要が発生しており、貨幣市場の均衡を回復するためには、利子率が$\small r_1$から上昇し、貨幣の資産需要を減少させる必要があります。
この利子率の上昇は、民間投資:$\small I$ が減少し総需要を減少させるため、国民所得は$\small Y’$から減少する。すなわち、利子率が $\small r_1$ から $\small r_2$ へ上昇することで国民所得が減少し、財市場と貨幣市場は再び $\small E_2$ で同時均衡します。
以上、政府支出の増加による利子率の上昇が、民間投資を減少させてしまい、結果的に国民所得に対する乗数効果を弱めてしまうことを「クラウディング・アウト」といいます。ここでのポイントは、財市場のみのケースよりも、貨幣市場を通じて利子率が上昇する分、国民所得の増分が小さくなることを押さえておきましょう。
IS-LMモデル分析②:拡張的な金融政策
拡張的な金融政策が発動された場合、国民所得と利子率がどのように変化するのかIS-LMモデルで考えます。金融政策に関する記事はこちら>>【マクロ経済学】貨幣供給とは(マネーストック)
中央銀行が拡張的な金融政策を発動すると、名目マネーストックは増加し、$\small LM$ 曲線は$\small LM_1$から$\small LM_2$へ右にシフトする。
マネーストックが増加すると利子率が下落するため、均衡点は $\small E_1$ から $\small E’$ に移動する。このとき、IS曲線の下側に位置するので、財市場では超過需要が発生するとともに、利子率の下落は民家投資を誘発させるため、国民所得が増加する。
この国民所得の増加により、貨幣市場で再び超過需要が発生し…という調整経路を経て、均衡点は $\small E_1$ から $\small E_2$に移動し、財市場と貨幣市場は再び同時均衡します。
おわりに:IS-LMモデル分析では均衡までの経路を理解する
以上、財市場と貨幣市場を同時均衡させるIS-LMの分析モデルとなります。
ポイントは次の2点。
1.財市場と貨幣市場の超過需要と超過供給の調整経路を理解する
2.クラウディング・アウトを押さえる
(政府支出増⇒貨幣市場では超過需要⇒利子率の上昇⇒民間投資の減少・国民所得の減少)

以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!
【参考文献】
二神孝一, 堀敬一(2017)『マクロ経済学 第2版』有斐閣.
大竹文雄(2007)『スタディガイド 入門マクロ経済学(第5版)』日本評論社.
編入希望の方はこちら 【編入】独学で経済学部の編入試験に合格する方法【ロードマップ】
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