こんにちは、とし(@tyobory)です。
ミクロ経済学第17回テーマ「マーシャル的調整過程・ワルラス的調整過程」です。
全体の目次:「マーシャル的調整過程・ワルラス的調整過程」
2.ワルラス的調整過程
3.クモの巣理論
需要と供給が一致するところが市場均衡となりますが、市場で不均衡が起きていた場合、どのような調整過程を経て、市場の均衡を達成するでしょうか。
その市場の不均衡を調整するプロセスとして、マーシャル的調整・ワルラス的調整・クモの巣理論の3つがあります。
本記事では、これらの調整プロセスから市場の不均衡ついて考えていきます。
マーシャル的調整過程【マーシャル的安定とマーシャル的不安定】
数量で調整する。
マーシャル的調整とは【数量調整】
マーシャル的調整とは「数量調整」方法のことで、次のように図解されます。
マーシャル的調整:数量が変化することによって均衡が達成される調整方法
生産量が$\small Q_1$のとき、需要価格は$\small P_{D_1}$、企業の供給価格は$\small P_{S_1}$で超過需要が発生しています。
このとき、消費者が払ってもよい考えている価格($\small P_{D_1}$)が企業の供給価格(限界費用:$\small P=MC$)よりも高いため、企業は財の生産量をさらに増やします。そして、最終的に点$\small E^*$で均衡します。
逆に、生産量が$\small Q_2$のとき、需要価格は$\small P_{D_2}$、企業の供給価格は$\small P_{S_2}$で超過供給が発生しています。同じように、企業は財の生産量を減らすことにより、最終的に点$\small E^*$で均衡します。
このように、財の生産量を調整することにより、需要と供給を一致させる過程を「マーシャル的調整過程」といいます。
マーシャル的安定とマーシャル的不安定とは?
マーシャル的な数量調整において、均衡するケースと均衡しないケースがあります。
マーシャル的安定:数量調整により均衡する
マーシャル的不安定:数量調整により均衡しない
供給曲線の傾き > 需要曲線の傾き(S>D)
供給曲線の傾きが需要曲線の傾きよりも大きいとき、均衡に向かいます。よく問題で出題されるのは、需要曲線が右上がり、いわゆるギッフェン財のケースです。
以下、マーシャル的安定とマーシャル的不安定を確認していきます。
均衡するケース(マーシャル的安定)
まず、供給曲線の傾きが需要曲線の傾きよりも大きい場合、マーシャル的安定として均衡します(下図)。
生産量が$\small Q_1$のとき、需要価格は$\small P_{D_1}$、企業の供給価格は$\small P_{S_1}$で超過需要が発生しており、企業は需要価格に見合った生産を行うという一連のプロセスを経て、均衡点に向かいます(逆$\small Q_2$も同じ)。
均衡しない(マーシャル的不安定)
次に、需要曲線の傾きが供給曲線の傾きよりも大きい場合、均衡点から離れていきます(下図)。
生産量が$\small Q_1$のとき、企業の供給価格は$\small P_{S_1}$、消費者の需要価格は$\small P_{D_1}$で超過供給が発生しており、企業は需要価格に見合う生産を行うため生産量を減らします。
つまり、図のように均衡点から外に離れていき、均衡せずマーシャル的不安定な状態となります(逆$\small Q_2$も同じ)。
以上、マーシャル的安定条件を再復習すると…
供給曲線の傾き > 需要曲線の傾き(S>D)
供給曲線が右下がりの場合もありますが、今回は省略します。
ワルラス的調整過程【ワルラス的安定とワルラス的不安定】
価格で調整する。
ワルラス的調整とは【価格調整】
ワルラス的調整とは「価格調整」方法のことで、次のように図解されます。
ワルラス的調整:価格が変化することによって均衡が達成される調整方法
価格が$\small P_1$のとき、需要量は$\small Q_{D_1}$、企業の生産量は$\small Q_{S_1}$で超過供給が発生しています。
このとき、需要量よりも供給量の方が大きいため、企業は価格を下げることによって調整を行い、点$\small E^*$で均衡します。
逆に、価格が$\small P_2$のとき、需要量は$\small Q_{D_2}$、企業の生産量は$\small Q_{S_2}$で超過需要が発生しており、企業は価格を上げて、点$\small E^*$で均衡します。
このように、財の価格を調整することにより、需要と供給を一致させる調整を「ワルラス的調整」といいます。
ワルラス的安定とワルラス的不安定とは?
マーシャル的調整と同様に、ワルラス的調整でも均衡するケースと均衡しないケースがあります。
ワルラス的安定:価格調整により均衡する
ワルラス的不安定:価格調整により均衡しない
需要曲線の傾き > 供給曲線の傾き(D>S)
以下、需要曲線が右上がりのギッフェン財のケースで、均衡するかどうか確認します。
均衡するケース(ワルラス的安定)
ワルラス的安定において、需要曲線の傾きが供給曲線の傾きより大きいと均衡に向かいます(下図)。
価格が$\small P_1$のとき、企業の生産量は$\small P_{S_1}$、消費者の需要量は$\small P_{D_1}$で超過供給が発生しています。このとき、企業は需要量に見合うように価格を引き下げ…というプロセスを経て、点$\small E^*$で均衡します($\small P_2$も同じ)。
均衡しない(ワルラス的不安定)
次に、需要曲線よりも供給曲線の傾きが大きい場合、均衡点から離れていきます
価格が$\small P_1$のとき、企業の生産量は$\small P_{S_1}$、消費者の需要量は$\small P_{D_1}$で超過需要が発生しています。このとき、企業は需要量に見合うように価格を引き上げるため、点$\small E^*$から遠ざかるように調整メカニズムが働きます($\small P_2$も同じ)。
以上、ワルラス的安定条件を再復習すると
需要曲線の傾き >供給曲線の傾き (D>S)
ワルラス的安定は、マーシャル的安定条件と逆になります。
クモの巣理論【数量調整と価格調整】
クモの巣のように渦を巻く。
クモの巣理論とは?【均衡条件を確認】
クモの巣理論とは、数量と価格が変化することによって均衡が達成される調整方法のことです。
マーシャル的調整とワルラス的調整を組み合わせたものです。以下、均衡するための条件です。
供給曲線の傾きの絶対値 > 需要曲線の傾きの絶対値
以下、均衡するケースとしないケースを同時に確認していきます。
まず、価格:$\small P_0$のとき、生産量($\small Q_1$)が決定されます。このとき、財の価格は需要曲線によって決まるため、価格は$\small P_1$に上昇し、それに対応した生産量は供給曲線より$\small Q_2$が求まる。
ここで、左図のように収束するか、右図のように発散するかは、供給曲線の傾きの絶対値に依存します。左図では、供給曲線の傾きの絶対値が需要曲線よりも大きいとき、クモの巣状に渦を巻いて収束します。
一方、右図のように供給曲線の傾きの絶対値が需要曲線よりも小さいとき、価格の変化よりも生産量の変化のほうが大きくなるため、均衡点と反対に遠ざかり発散していきます。
おわりに:マーシャル的調整・ワルラス的調整・クモの巣理論を正しく理解しよう
以下、簡単にまとめると…
1.マーシャル的調整:数量調整(による価格調整)
2.ワルラス的調整:価格調整(による数量調整)
3.クモの巣理論:数量調整と価格調整を同時に行う
なお、通常の需要曲線と供給曲線の均衡状態の場合、マーシャル・ワルラスともに安定となります。
以上、「マーシャル的調整・ワルラス的調整・クモの巣理論」でした。
以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!
【参考文献】
尾山・安田(2013)『経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める』日本評論社.
神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社.
マクロ経済学の学習はこちら マクロ経済学を学ぶ【記事一覧】
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