こんにちは、とし(@tyobory)です。
ミクロ経済学第13回テーマは「異時点間の最適消費計画」です。
全体の目次:「異時点間の最適消費計画」
2.異時点間の予算制約式
3.異時点間の最適消費計画
異時点間の最適消費は、最適消費の応用で、2期間の消費計画を考えます。
基本的な考え方は「最適消費計画」「最適労働供給」と同じなので、まだチェックしてない方は、下記をご参考ください。
本記事では、異時点間の最適消費計画について掘り下げていきます。
異時点間の最適消費計画とは?現在と将来の消費、そして予算制約式
時空を超えた消費計画。
異時点間の最適消費とは?
異時点間の消費とは、文字通り「異なる時点」の消費を考えることです。
異時点間の「最適消費計画」なので、現在の消費と将来の消費の組み合わせを考え、効用を最大化させるような最適消費条件を導出することが目的となります。
異時点間の最適消費計画の予算制約式(2期モデル)
異時点間の最適消費の予算制約式は、今期の予算制約式と来期の予算制約式の2本で表されます。
①:今期の予算制約式:$\small Y_1=C_1+S$
⇔$\small S=Y_1-C_1$
②:来期の予算制約式:$\small Y_2+(1+r)S=C_2$
今期の所得($\small Y_1$)は今期の消費($\small C_1$)と貯蓄($\small S$)に振り分けられます。
貯蓄($\small S$)は、利子が付いて来期所得の一部となるため、来期の消費($\small C_2$)は来期の所得($\small Y_2$)に利子付き貯蓄($\small (1+r)S$)を足し合わせたものとなります。
ここで、②式に①式の今期予算制約式を代入し、両辺を$\small (1+r)$で割り、並び替えます。
$\small Y_2+(1+r)(Y_1-C_1)=C_2$
$\\$$\small \frac{\displaystyle Y_2}{\displaystyle (1+r)}+(Y_1-C_1)=\frac{\displaystyle C_2}{\displaystyle (1+r)}$
ー異時点間消費の予算制約式ー
$\\$$\small Y_1+\frac{\displaystyle Y_2}{\displaystyle (1+r)}=C_1+\frac{\displaystyle C_2}{\displaystyle (1+r)}$$\\$
これが、異時点間消費の予算制約式となります。大事なのは、この式が意味するところです。
来期の消費・所得を利子率($\small (1+r)$)で割ることは、来期の所得・消費を今期の価値(現在価値)で測ることを意味しています。
すなわち、この等式は所得と消費の現在価値が等しくなることを表しています。
異時点間の最適消費計画を図解
異時点間のモデル式を組み立てる。
異時点間の最適消費と予算制約式【図解】
上記で定式化した異時点間消費の予算制約は、次のように変形することができます。
このように、予算制約線の傾きの大きさは$\small 1+r$、切片は$\small (1+r)Y_1+Y_2$、最適消費点は点$\small E(C^*_1,C^*_2)$となります。
他方で、最適消費できるかどうかは所得水準に依存しており、最適消費するために貯蓄する場合と借入する場合があります。
異時点間消費における貯蓄と借入
異時点間の最適消費を考えるとき、今期の所得水準から貯蓄するか借入するか決定します(下図)。
貯蓄する場合
貯蓄されるのは、今期の所得($\small Y_1$)が今期の最適消費($\small C^*_1$)を上回っているときです。
このとき、貯蓄分は来期の消費に回され、利子分上乗せされて来期の消費($\small C^*_2$)の一部となります。
借入する場合
今期の最適消費よりも、今期の所得が小さい場合、借入を行ってその分を賄います。
そして、来期に借入した分を利子付きで返済し、来期の消費($\small C^*_2$)は返済分だけ減少します。
異時点間の最適消費で利子率が上昇した場合(代替効果と所得効果)
異時点間の最適消費において、利子率が上昇した場合、どのように最適消費点が変化するのかを考えます。
代替効果と所得効果について詳しく知りたい方は、下記記事をチェックしてみてください。
貯蓄が増加するケース(代替効果 > 所得効果)
利子率が上昇したとき、所得点を中心に予算制約線は上方に回転し、$\small M_1$から$\small M_2$シフトします。
利子率が上昇すると、今期の消費を減らし貯蓄したほうが所得が増えるため、代替効果は点$\small E_1$から点$\small E’$への移動により今期の消費は減少として確認することができます。
次に、利子率の上昇は実質所得の増加をもたらし、今期の消費額を増やします。これが所得効果であり、$\small E’$から$\small E^*$の移動により確認することができます。
以上、点$\small E_1$から点$\small E^*$の移動により、全部効果として貯蓄が増える結果となりす(代替効果 > 所得効果)。
貯蓄が減少するケース(所得効果 > 代替効果)
代替効果は、貯蓄が増加するケースと一緒です。
代替効果は効用水準が一定の下での利子率の変化による消費の変化をみるため、点$\small E_1$から点$\small E’$への移動により確認することができます。
ここで、貯蓄が減少するケースは、代替効果よりも所得効果が大きい場合です。
明らかに、代替効果($\small E_1$→$\small E’$)よりも所得効果($\small E’$→$\small E^*$)の方が大きいですよね。
以上から、点$\small E_1$から点$\small E^*$の移動により、全部効果として貯蓄が減少します(所得効果 > 代替効果)。
おわりに:異時点間消費のモデル式を立てられるようにする
異時点間消費では、2期間を想定してモデル式を組み立てるため、以下の公式を覚えましょう!
①:今期の予算制約式:$\small Y_1=C_1+S$
⇔$\small S=Y_1-C_1$
②:来期の予算制約式:$\small Y_2+(1+r)S=C_2$
ー異時点間消費の予算制約式ー
$\\$$\small Y_1+\frac{\displaystyle Y_2}{\displaystyle (1+r)}=C_1+\frac{\displaystyle C_2}{\displaystyle (1+r)}$$\\$
以上、異時点間の最適消費でした。
以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!
【参考文献】
尾山・安田(2013)『経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める』日本評論社.
神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社.
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