こんにちは、とし(@tyobory)です。
マクロ経済学第19回のテーマは「AS曲線(総供給曲線)とは?【求め方/導出方法】」です。
目次:「AS曲線(総供給曲線)とは?【求め方/導出方法】」
2.AS曲線(総需要曲線)の求め方1(古典派)
3.AS曲線(総需要曲線)の求め方2(ケインズ派)
第18回テーマでは、AD曲線の導出について確認しました。まだ記事を確認していないよ!という人は、以下の記事をご確認ください。
AD-ASモデルは、IS-LMモデルに労働市場を加えたモデルであり、AS曲線は労働市場の需要と供給曲線から導出されます。
IS-LMモデルについては、下記記事をご参考ください。
本記事では、AS曲線を労働市場から導出していきます。
いくぜ!
【マクロ経済学】AS曲線(総供給曲線)とは?【求め方/導出方法】
AS曲線は2パターンある。
【再掲】AD曲線とは、AS曲線とは?
AD曲線は、Aggregate Demand Curveの略で、総需要曲線と呼ばれます。
AS曲線は、Aggregate Supply Curveの略で、総供給曲線と呼ばれます。
Aggregateは「総計」、Demandは「需要」、Supplyは「供給」
AD曲線やAS曲線は、財市場の総需要曲線や労働市場の供給曲線など表記が被るため、区別するためにAD-ASを使っていると思います。
そのため、AD曲線やAS曲線が問われたら、IS-LMモデルの財市場と貨幣市場の同時均衡だけではなく、さらには労働市場を加えたモデルだと理解しましょう。
以下、AD-ASモデルは物価水準( P)と国民所得(GDP)の関係性を表したグラフとなります。
AS曲線は、古典派経済学とケインズ派経済学の考え方によって、AS曲線の形状が異なります。
以下では、古典派とケインズ派の考え方の違いに着目して、AS曲線を導出していきましょう。
AS曲線(総需要曲線)の求め方1(古典派)
古典派のAS曲線は、労働需要曲線と労働供給曲線から求められます。
古典派モデルの体系は、労働市場での完全雇用均衡に特徴があり、ワルラス的価格調整機能、いわゆる価格の伸縮性を主張しています。
つまり、古典派は、労働市場において名目賃金率は伸縮的であるため、ある実質賃金率の水準で働きたいと思う労働者は全員働くことができるとして、常に完全雇用が達成されることを主張しました。
これに対して、ケインズ派は、名目賃金には下方硬直性があると指摘し、一定の失業(非自発的失業)が発生すると批判した。
要は、働いて得られる賃金なんてすぐには変化するわけない!
そのため、ケインズ派は次のような理論を展開しています。
AS曲線(総需要曲線)の求め方2(ケインズ派)
ケインズ派の主張は2つです。
1.古典派の第1公準は正しい(実質賃金と労働の限界生産物は等しくなる)
2.古典派の第2公準は誤り(人々の労働供給は実質賃金で決定されない)
ケインズ派は、労働者が実質賃金率の変化に応じて労働供給量を決定することはないとし、名目賃金率の下方硬直性により、非自発的失業が存在する不完全雇用均衡が一般均衡であると批判した。
ケインズ派は、この労働市場を、次のように図示しています。
ケインズ派は、労働者が反応するのは実質賃金ではなく名目賃金水準であると考え、この名目賃金の水準を$\overline{w}$とします(例だと、時給や年収などの額面に反応する!)。
ここで、物価が上昇すると、実質賃金($\frac{w}{p}$)が下落するため、企業は労働者を雇おうとして、経済全体の雇用量は増加します。
しかし、人々が現行の賃金水準で働くことを望んでいるにも関わらずに、就業の機会を得られない労働者も存在し、失業が発生すると考えました。これが「非自発的失業」です。
非自発的失業:$N_F-N_i$の差
以上を整理すると、ケインズ派は、「非自発的失業」の存在により、古典派のような完全雇用が達成されないとし、完全雇用水準までは物価が上昇するにつれて、企業の労働需要は増加すると考えました。
そして、雇用が増加すると国民所得もまた増加するため、ケインズ派のAS曲線は完全雇用水準まで右上がりの曲線として図示され、完全雇用が達成された後は、AS曲線が垂直になると主張しました。
以上が、AS曲線をめぐる古典派とケインズ派の論争です。
まとめ:AS曲線は、古典派とケインズ派によって異なる
AS曲線は、古典派やケインズ派の労働市場の議論が入るため、色々ややこしいかもしれません。
でも、一つ一つ丁寧に理論やグラフを追っていけば、理解できると思うので、是非参考にしてみてください。
次回は、AD-ASモデル分析についてまとめたいと思います。
以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!
【参考文献】
中谷巌(2021)『入門マクロ経済学〔第6版〕』日本評論社.
齋藤誠他(2016)『マクロ経済学 新版』有斐閣.
大竹文雄(2007)『スタディガイド 入門マクロ経済学(第5版)』日本評論社.
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