こんにちは、とし(@tyobory)です。
マクロ経済学第8回のテーマは「IS曲線の導出」です。いよいよ、国民所得の決定理論の本筋であるIS-LM分析に入ります。
全体の目次:「ISの曲線の導出」
2.IS曲線の導出
3.IS曲線の性質
4.IS曲線のシフト(財政生佐生の効果)
IS曲線は財市場の均衡における利子率と国民所得の関係を表したものです。
IS曲線の結果だけでなく導出過程も含めてマスターしましょう。
【マクロ経済学】IS曲線の導出について【財市場の均衡とISの均衡】
投資と貯蓄の均衡
IS曲線とは何か【財市場の均衡とISの均衡】
IS曲線とは、投資(Investment)と貯蓄(Savings)が等しいときの利子率と国民所得の組み合わせで、一般的に右下がりの曲線になります(下図)。
このとき、財市場の需要と供給も均衡しているため、財市場の需給均衡を表す曲線とも言えます。
IS曲線の導出【投資曲線、45度線、貯蓄曲線】
IS曲線は、投資曲線、45度線、貯蓄曲線により導出され、次のように図示されます。
第2象限:投資曲線は利子率の減少関数で、利子率 $\small r_1$ に対応した 投資 $\small I_1$ が決定
第3象限:財市場の均衡では、投資と貯蓄が等しくなるため、45度線で折り返す
第4象限:貯蓄曲線から貯蓄 $\small S_1$ から国民所得 $\small Y_1$ が決定
第1象限:利子率 $\small r_1$ に対応した $\small Y_1$ で点 $\small E_1$ がプロットされる
以下、$\small r_2$ も同様の経路をたどると、点 $\small E_2$ がプロットされ、こうした点の集合によりIS曲線が導出される。
【補論】財市場で投資(I)と貯蓄(S)が等しくなるワケ
財市場において投資(I)と貯蓄(S)が等しくなるのは、財の需要式を貯蓄式に代入すると求められます。
需要式:$\small Y=C+I$
貯蓄式:$\small S=Y-C$
$\small I=S$(投資=貯蓄)
また、投資曲線の関数は次のように定義されます
$\small I=I_0-ar$
($\small I_0$:独立投資、$\small a$:投資の利子弾力性、$\small r$:利子率)
利子率rの符号はマイナスであり、利子率が高いほど投資が減少し、利子率が低いほど投資が増加します。これは、利子率が上がると、投資案件のプロジェクトの費用が増加するため、投資が減少します。
IS曲線の性質と財政政策によるIS曲線のシフト
超過需要・超過供給、IS曲線のシフトを理解
IS曲線の性質【超過需要と超過供給】
IS曲線上において財市場は均衡しているが、IS曲線の上側と下側で、超過供給と超過需要が発生しています。以下、点 $\small E_1$ と点 $\small E_2$ がどういう状態か確認します。
点$\small E_1$ は、IS曲線上の上側に位置しており、超過供給が発生している状態。これは、均衡よりも利子率が高い状態にあり、利子率に対応した投資(I)よりも国民所得に対応した貯蓄(S)の方が大きい状態となっています( $\small I<S$ )。
投資(I)は総需要の一部であり、貯蓄(S)は総供給の一部なため、つまりIS曲線よりも上側の場合、超過供給が発生しているという解釈となります。
同様に、点$\small E_2$ は、IS曲線上の下側に位置しており、超過需要が発生している状態。これは、均衡よりも利子率が低い状態にあり、国民所得に対応した貯蓄(S)よりも利子率に対応した投資(I)の方が大きい状態となっています( $\small S<I$ )。つまり、超過需要の状態を指します。
以上をまとめると、IS曲線よりも上側の場合、超過供給が発生しており、IS曲線よりも下側の場合、超過需要が発生していると考えられます。
IS曲線のシフト【財政政策の効果】
財政政策が発動された場合、IS曲線がどのようにシフトするのか確認します。
当初、上図の財市場では点 $\small E_1$ で均衡し、国民所得は $\small Y_1$ である。ここで、政府が財政政策を発動し、政府支出を $\small ΔG$ だけ増加させたとすると、総需要曲線は $\small ΔG$ だけ上にシフトし、$\small Y_{d1}$ から $\small Y_{d2}$ となる。
財市場の均衡点は $\small E_1$ から $\small E_2$ に移動し、国民所得は $\small Y_1$ から $\small Y_2$ に増加する。同様に、IS曲線も国民所得の増加分だけ右にシフトし、IS曲線は $\small IS_1$ から $\small IS_2$ にシフトする。なお、政府支出の削減や増税の場合、逆にIS曲線は左にシフトすることになる。
以上、IS曲線に関する諸々となります。
おわりに:IS曲線の導出過程をグラフで書けるようになる
本当はIS曲線が導出できるようになるのが一番ですが、特に細かく覚える必要のない人は、
① IS曲線は右下がりの曲線で、利子率と国民所得の関係を表したもの
② IS曲線より上側の場合、超過供給、IS曲線より下側の場合、超過需要である
③ 財政政策を発動すると、IS曲線は右にシフトする
ここらへんを押さえればOKだと思います。
以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!
【参考文献】
中谷巌(2021)『入門マクロ経済学〔第6版〕』日本評論社.
齋藤誠他(2016)『マクロ経済学 新版』有斐閣.
大竹文雄(2007)『スタディガイド 入門マクロ経済学(第5版)』日本評論社.
マクロ経済学の学習はこちら マクロ経済学を学ぶ【記事一覧】
ミクロ経済学の学習はこちら ミクロ経済学を学ぶ【記事一覧】
編入希望の方はこちら 【編入】独学で経済学部の編入試験に合格する方法【ロードマップ】