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【ミクロ経済学】不完全競争と独占理論【プライスメーカー:価格支配力】

こんにちは、とし(@tyobory)です。

ミクロ経済学第19回テーマ「不完全競争と独占理論」です。

目次:「不完全競争と独占理論」

1.不完全競争とは
2.独占企業の利潤最大化条件
3.独占理論の計算問題

これまで完全競争を前提として記事にまとめてきました。第19回以降では、「不完全」な競争について取り扱い、一番最初に学ぶのがこの「独占理論」です。

以下、不完全競争市場について概観し、独占理論について掘り下げていきます。

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【ミクロ経済学】不完全競争と独占理論【プライスメーカー:価格支配力】

不完全な競争と独占。

不完全競争市場とは?

不完全競争市場は文字通り、完全競争が成り立たない市場のことで、主に4つの市場に区分されます。

1.独占市場:生産者が一人(一企業)
2.複占市場:生産者が二人(二企業)
3.寡占市場:生産者が少数
4.独占的市場:生産者間で製品の差別化がされている

独占市場の特徴は「プライスメーカー(価格支配力があるもの)」であることです。

完全競争市場の場合、生産者は「プライステーカー(価格受容者)」であり、価格は所与とされていました。一方、独占市場では、独占企業は市場価格に影響を与えることができます。

以下、独占企業の場合、どのように価格づけを行うか確認します。

独占企業の利潤最大化条件【MR=MC】

まず、完全競争市場における利潤最大化条件をみましょう。

―完全競争市場の利潤最大化― $\\$$\small \Pi = TR-TC(Q)$ $\\$ $\small =P × Q-TC(Q)$ $\\$ $\small \displaystyle \frac{⊿\Pi }{⊿Q}=P-MC=0⇔P=MC$

限界費用が価格(限界収入)と等しいとき、完全競争における利潤最大化条件となります。

一方で、独占企業のように価格支配力を持つ場合、生産量を変化させることにより、市場価格($\small P$)は変化します。つまり、独占企業は以下の利潤を最大化します(下図)。

独占理論では、財の生産をしているのは独占企業1社しかないため、生産量を増やすことにより、財の価格は需要曲線に従って下落します。そのため、価格は$\small P=P(Q)$と表されます。

ここで、$\small P=a-bQ$とし、利潤式を定式化します。

―独占市場の利潤最大化― $\\$$\small \Pi = TR(Q)-TC(Q)$ $\\$ $\small =P (Q)× Q-TC(Q)$ $\\$ $\small = (a-bQ)× Q-TC(Q)$ $\\$ $\small =aQ-bQ^2-TC(Q)$ $\\$ $\small \displaystyle \frac{⊿\Pi }{⊿Q}=a-2bQ-MC=0⇔a-2bQ=MC$

限界収入($\small MR$)と限界費用($\small MC$)が等しくなるとき、独占企業の利潤が最大化されます($\small MR=MC$)。

ここで、限界収入($\small MR$)についてみると、$\small MR=a-2bQ$となり、限界収入曲線($\small MR$曲線)の傾きは需要曲線の傾きの2倍となります。

以下、独占企業の独占利潤と独占による死荷重の発生です(下図)。

(左図)
独占利潤:$\small (P^*-AC^*)×Q^*$
(右図)
消費者余剰:△$\small aP^*E^*$
生産者余剰:□$\small cP^*E^*e$
死荷重:△$\small E^*E’e$

独占の場合、生産者は利潤を最大化させるため、完全競争市場の均衡価格よりも高く設定される。

したがって、独占は死荷重を発生させ、完全競争市場と比較して、総余剰は小さくなる。

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独占理論の計算問題

(問題)


独占企業の需要曲線と総費用曲線が、次のように与えられている。

$\small D=100-2P$ $\\$ $\small TC=Q^2+5Q+20$

このとき、独占企業の利潤を最大化させるような生産量と独占価格を求めなさい。


(解答)

需要関数を$\small P=…$に変形し、$\small D=Q$とすると、

①・・・$\small P=50-0.5Q$

となる。このとき、独占企業の利潤式は次のように示される。

$\small \Pi = TR(Q)-TC(Q)$ $\\$ $\small =P (Q)× Q-TC(Q)$ $\\$

問題文と①式を代入し、生産量Qで微分すると、

$\small \Pi =(50-0.5Q)× Q-(Q^2+5Q+20)$ $\\$ $\small \displaystyle \frac{⊿\Pi }{⊿Q}=50-Q-2Q-5=0$ $\\$ $\small ∴Q=15$(生産量)

この導出された生産量:$\small Q=15$を、需要関数に代入する。

$\small ∴P=42.5$(独占価格)

以上より、$\small Q=15$、$\small P=42.5$である。


いかがでしたか。解けましたかね。

おわりに:独占理論のポイントは3つ

おさらいすると、独占理論のポイントは3つ。

①:独占企業の利潤最大化($\small MR=MC$)

②:価格支配力を持つため、利潤式に需要関数:P=…を代入する
③:生産量(Q)が求められたら、需要関数(D)から価格を導出する

特にポイントは、利潤式のP(Q)に需要関数:P=…を代入すること、そして生産量が導出されたら、供給曲線ではなくて、需要曲線の関数に代入することです。

以上、不完全競争市場の独占理論についてでした。

以上となります。参考になった方は応援もよろしくお願いします!

【参考文献】
尾山・安田(2013)『経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める』日本評論社.
神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社.

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